認定支援機関の役割

創業補助金における認定経営革新等支援機関の役割

創業支援のポイント 〜はじめに〜

創業によって雇用の創出や地域経済の活性化を図るためには、創業件数を増加させるだけでは不十分で、創業後の成功確率を高め、成長に貢献することが必要です。
したがって、創業までの支援だけでなく、創業後のサポートも重要であり、創業準備期〜創業期〜創業直後期〜成長期〜安定期(成熟期)と、成長段階を追って切れ目のない支援をすることが求められています。

創業準備期〜創業期は、事業計画策定、資金調達、会社設立手続等が主な支援ポイントです。
また、より重視されるべきポイントとしてはマーケティングがあります。マーケティング戦略はビジネスそのものをつくり上げることといっても過言ではなく、かつ、顧客からの売上を獲得する仕組みづくりに関するものであるからです。
創業後は各企業の事業内容、経営環境によって、多様な経営課題を各企業が抱えることとなります。企業が事業展開するにつれ、従業員、取引先、顧客、金融機関などのステークホルダーが増し、その関係も複雑化するためです。

創業段階を追った切れ目のない支援をするために、支援人材には、創業準備段階の会社設立、資金調達といった限定された知識だけでなく、より幅広い知識やノウハウが求められます。
ここでは、それぞれの支援人材が経験から得た知識だけではなく、実務に基づいた実践理論(いわゆる『定石』)も必要です。このような実践理論を踏まえた支援により、創業者は定石を踏まえた上で、自分なりの創意工夫を加え、自信を持って経営することが出来るのです。

企業を経営し、事業を展開していく上では、数多くの意思決定が求められます。多くの意思決定は単純なものではなく、選択肢が多かったり、予見できない条件があったりするため、経営者として迷うことも多いものです。
そのときに、経験と実践理論に基づく支援人材のアドバイスは一つの有効な道しるべになるのです。

こうした観点から認定支援機関には、アドバイスをお願いします。

認定経営革新等支援機関による具体的な支援内容@

@ 創業しようとする方の話を十分に聞いて、アドバイスしてください 〜夢を整理〜

創業しようとする方の多くは、アイデアはあるものの、しっかりとビジネスプランまで整理しておらず、計画も漠然としたものになりがちです。経験の浅い創業者にとっては、認定支援機関の幅広い知見やネットワークは非常に有効であり、客観的な立場で創業しようとする方の話を聞いて、アドバイスしてください。

【ヒアリング項目の例】
・ 創業の動機は明確ですか。
・ 提供する商品・サービスのセールスポイントはありますか。競合他社と比較し、品質・価格等に競争力がありますか。
・ 創業しようとする事業について、知識、経験、ネットワークがありますか。
・ 提供する商品・サービスについて、ニーズはありますか。(ターゲットの絞り込み)
・ 受注先、仕入先の見込みはありますか。
・ 事業に必要な従業員、ビジネスパートナーは確保できそうですか。
・ いつ、どこで創業しますか。

A 事業計画の作成に対する支援をお願いします 〜夢を形に〜

事業計画は、自分の夢(創業)を実現するための具体的な行動を示す計画書です。創業者の頭の中に描いている
創業のイメージをより具体的にまとめることにより、実現可能なものになります。
事業計画は、次の4つの内容を備えたものです。

・ 全体構想
・ 具体的な事業内容
・ 創業時の資金計画表
・ 損益計算表

【事業計画の内容】

  • 全体構想
    創業の動機
    事業の概要
    市場の環境
    事業の将来目標
    事業の課題
  • 具体的な事業内容
    事業の内容
    事業の特徴 (セールスポイント)
    販売計画 (誰が、誰に、何を、どこで、どのように、販売条件、営業時間 など)
    仕入計画 (何を、どこから、どんな条件で、どのくらい など)
    設備計画 (店舗、改装費、機械に必要な経費、資金調達先 など)
    要員計画 (ビジネスパートナー、スタッフ など)
  • 創業時の資金計画表
    必要な資金(設備資金、運転資金)
    調達方法(自己資金、借入金)
  • 損益計算表(収支計画)
    売上高
    売上原価
    経費
    利益
    返済原資(返済計画)

B 創業後のサポートをお願います 〜夢を確実に〜

創業者は、日々の売上げ、仕入れ、資金繰りなど、気にかけなければならないことが数多くあり、初めてのビジネス で大きな不安を持ちながら始める方が多いと思います。創業前に立てた事業計画と実際のビジネスにおいて、どれ だけの差が生じているのかを確認することは大切です。
そのためには、中小企業の会計要領等を参考に適時適正な記帳を行い、タイムリーな月次決算による分析を行い、 早期に改善を行えるよう、サポートをお願いします。

また、創業補助金については、補助事業に要した経費を明らかにし、補助事業終了時に支払い等が確認できる書類 を添えて提出することが必要です。補助金の交付決定を受けても、期限内に補助金の確定ができなければ、お支払い することができません。補助金の仕組みについて、ご説明をお願いします。

【参考】 ビジネスプランの作成

創業支援のエッセンス(中小企業庁)より

○ 本気のビジネスプランか
起業は、「夢」への第一歩です。同時に多くは苦難の道でもあります。そこを歩み始めるに当たって十分な覚悟があるか、情熱が込められているかが重要な鍵です。起業家の情熱の感じられないビジネスプランでは、一緒にチャレンジする人を惹きつけたり、投資家を唸らせることはできません。思い付きや軽いノリで始めようとしても、ビジネスプランの中でそれは露呈してしまいます。アイディアだけで起業しようと相談に来る人もいるでしょう。しかし、思いつきだけで成功する人はいません。思いつき=アイディアをいかに実行可能なビジネスプランに昇華させるか、そのステップ無しには成功は望めません。本気のビジネスプランからは、周到な準備と細心の計画が汲み取れるはずです。
その上で、成功に向かっての強い信念が読み取れる、そんなビジネスプランでなくてはいけません。

○ 独りよがりのビジネスプランでないこと
ビジネスプランは、起業家が独力で一気に書き上げるものというのは、むしろ間違った部類の考え方です。起業家一人の能力、情報は限界があります。弱みを補強してくれるパートナーとビジネスプランを練り上げるべきです。しかし、なかなか最初から適切なパートナーがいない場合もあります。その場合も、必ず起業家のことを理解する人、目指すビジネスに造詣の深い先輩などを探し出して、ビジネスプランに対するアドバイスをもらって、欠点を発見し修正するべきです。支援人材がビジネスプランの作成を支援する際には、単に書き方の指導や過去の成功例の押し付けになったり、チャレンジングなプランに、リスクを論して冷や水をかぶせることになったりしてはいけません。
一緒になってこのビジネスを成功させるんだという、起業家と同じ視点と若さに立ったアドバイスが求められます。

○ わかりやすく、成功を予感させるものであること
投資家や金融機関に理解してもらうためにはたくさん記述した方がよいと考える人もいます。プレゼンテーションでも長々と事業内容を説明する人がいます。しかし、ぶ厚いビジネスプランは変化に対応して適宜見直しを図るには不向きですし、それを読むベンチャーキャピタル等の忙しい人の目にも止まりにくいのです。メリハリがあって、かつポイントをはずしていない、洗練され、簡潔にまとめあげられたビジネスプランこそ、望ましいのです。米国には『エレベータ・ピッチ』という言葉があって、エレベータに乗っている間にビジネスを説明して、投資家を虜にするくらいのものでないといけないと言われます。A3版見開き一枚のサマリーを使って、3分以内に事業の骨格を説明できるような訓練が必要です。
わかりやすいことも重要です。専門的な説明のみに終始しても、読み手の理解度を下げ、興味を失わせます。「大切なのは普通の言葉で非凡なことを言うこと」(ショーペンハウウェル)です。データも重要です。市場や財務のデータは、不慣れな人には面倒かも知れませんが、ビジネスプランを作成する上では不可避なものです。「数字」がビジネスの世界の共通語ですし、ごまかしの効かないものだからです。
また市場データはビジネスプランを構築する上で根幹をなすものです。「全く新しい商品だから予測がつかない」「爆発的に売れる」という人も少なくありませんが、これはまだ検討が不十分なアイデア段階に留まっているのに過ぎません。顧客は必ず何らかの代替品・サービスを利用しているはずです。仮にまとまった統計データがなくても、代替品等の販売実績から、また想定顧客層の数や支払可能金額などからも市場規模を規定することはできるはずです。

○ 顧客の視点で考えること
ビジネスプランは、顧客の視点で考えられていることが必要です。提供する商品・サービスが何で、何故、顧客は対価を払ってそれを購入するか、それが実現する顧客価値は何かを突き詰めて考え、立証することが必要です。その商品はどこが新しいのか、そして顧客が待ち望んでいたものなのか、安いから買うのか。または同じレベルの性能のものだから、同程度売れると考えるのか。いづれにしても信用と市場シェアのある大企業と異なる訳ですから、提供者の論理でなく顧客の視点で考え述べられていることが必要です。それを端的に立証できる実際のテストデータや顧客の声は読み手のポイントを高くします。少なくとも、お客様20人から意見を聞いてみましょう。

○ リスク分析−最悪に備えること
経営環境は目まぐるしく変化しています。したがって、あらゆるリスクに対応して、常に成功することは難しくなっています。現実的には傷口が大きくならないうちに、業容を転換して経営革新を図る、また場合によっては事業そのものを畳むことも考えなくてはいけません。
予めどういうリスクが予見されるか、それに対する対策は何があるかなど、リスクを十分に分析しておくことが有効です。まずどういうリスクがあるかを把握することから始めるべきでしょう。一般には顧客ニーズの読み違え、売り先の倒産、競争相手の参入、法律改正などが考えられます。業界特有の問題、例えば食品業界であれば無認可原料の混入や食中毒などもあるでしょう。少なくともリスク要因が十分上げられるだけの、自分が参入を図る業界知識がないと成功は覚束ないし、泥沼の失敗に陥りかねません。
最悪に備えること、これもビジネスをスタートさせる上で、十分に考えなければいけない事項です。

以上の点に留意しつつ、成功への処方箋としてのビジネスプランを創業者とともにブラッシュアップしていくことが支援人材に求められて います。

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